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第6学年「てこ」全員が問題解決する場面をつくろう【理科専科.com】

1.問題解決に夢中になる姿を求めて

 第6学年「てこ」の単元は,ある教科書会社では主にこのようになっています。

てこ 全10時間 
【てこのはたらき(7時間)】
・てこの力点や作用点の位置を変えて,手応えを調べる。
・実験用てこを使って,手応えをおもりの重さで数値化する。
・てこを使ってものを持ち上げる時のきまりを調べる。
【身のまわりのてこ(3時間)】
・はさみやくぎ抜きに利用されているてこのはたらきを調べる。
・道具に利用されているてこのはたらきを説明する。

 

 児童が行う実験は2つです。

・作用点と力点の支点からの距離を変えた時の手応えを調べる。
・実験用てこを使って,てこのきまりを見つける。

 これらの実験を通して,同じ重さのものを持ち上げる時はつり下げる場所によって手応えが全く違うことや,てこを使ってものを持ち上げる時に棒が水平につりあった場合,(おもりの重さ)×(支点からの距離)が棒の左右で等しくなるというきまりを見つけていきます。子どもはこれらの実験が大好きです。手応えを確かめたり,実験用てこにおもりをつり下げて左右がつり合ったりすると,歓声が上がります。

 しかし実験を通して「てこのきまり」が分かったというより,生活経験で分かっていることや先行知識をもっている子どもが「てこのきまり」を実験で確かめていたような様子も見られました。問題解決というよりも,答え合わせをしているようでした。そこで全員が「てこのきまり」を活用した問題解決の場面を単元の中に入れたいと思いました。予想で考えが分かれて,実験で確かめてみないと分からない問題を仕組むことで,全員が問題解決に夢中になる場面を作りたいと思いました。

2.既習の知識を活用した問題解決を

(1)針金を水平につり下げて片方を折り曲げたらどうなるのか?

 (おもりの重さ)×(支点からの距離)が棒の左右で等しくなるというきまりが全員で確認できたあと,針金を水平につり下げた状態のものを見せます。片方の針金を折り曲げたらどうなるのか予想しました。

予想1 つり合う   3人 
予想2 右に傾く   6人 
予想3 左に傾く  12人 

 予想のあと,それぞれが予想の理由を説明しました。針金は同じなのでまっすぐだろうが折り曲げようが,つり合いは変わらないという児童や,折り曲げた方が針金の重さがかかって重くなるのではという理由などが発表されました。最後に左に傾くという理由の説明で実験用てこを用いた説明をする子どもがいました。この説明を聞いたあと全員の予想が,まっすぐの針金の方(左)に傾くという意見に変わりました。その後の実験で確かめて,全員が納得する結果になりました。

Screenshot

(2)水平につり合ったにんじんの重さはどうなっているのか?

 針金の問題の次はにんじんの問題を考えました。水平につり下げたにんじんを支点のところで2つに切り取ると,重さはどうなるのか予想しました。

予想1 A=B   20人 
予想2 A>B    5人 
予想3 A<B    0人

 

 ほとんど子どもがつり合っているのだから同じ重さだと予想しました。しかしAの方が重いと予想した子どもたちが5人いました。これまではこのにんじんの問題を,単元の導入の問いをもたせる場面で行っていました。するとほぼ全員がどちらも同じ重さだと答えていました。しかし「てこのきまり」を学んだ後で行うと,意見が分かれるようになりました。そしてどちらの子どもからも「てこのきまり」を根拠にした予想の理由が出ました。

 特にAの方が重いと考えた子どもの中から,前回の針金問題を思い出し,実験用てこを用いて理由を説明する子どもが現れました。にんじんがつりあった状態を実験用てこで再現し,なぜ短い方が重いのか,おもりの重さで説明していました。塾などで先行知識をもっている子どもだけでなく,全員が同じ条件で考える場面となりました。

 そして説明を聞いている子どもの表情が段々と変わっていきました。支点からの距離が短いのにつり合うということは,それだけ重たくなっているということだと気付き始め,「ああ!間違えた!!」「そうか!」と重さが同じだと思っていた子どもから次々と声が上がっていきました。そこまで予想で話をしっかりしていると,教師が実験を行なってその結果を見るだけで子どもたちは,大歓声をあげていました。

3.実験・観察をしていなくても楽しい理科に

 針金とにんじんの問題は,教師に同じように問いかけても考えが分かれるものです。ある理科の研究会の指導講話で,大学の先生が理科の研究会に参加された先生方に同じ問題を出されました。すると先生方の考えは見事に分かれました。大人もよく考えないと,間違えてしまう問題です。

 前述の通り私はかつてこの問題を,子どもに「あれ?なんでこうなるんだろう?」という問いの見出しの導入場面で取り入れていました。導入場面で取り入れると子どもたちの予想がはずれて「え?なんでそうなるの??」という問いをもたせる効果がありました。しかし子どもたちが見出した問いが授業の問題につながりにくく,予想の理由が「勘」や「なんとなく」で語られることが多かったです。実験用てこを用いて自分の予想の理由を話す子どもの姿には全くつながりませんでした。

 そこで「てこのきまり」を学習した後に取り入れることで,「てこのきまり」を予想の根拠とし,自分の予想の理由を実験用てこで具体的な数値を入れて説明することができました。予想の根拠を自分が学習した内容から引き出すことで,自分の予想が違っていた時も,納得して正しい予想に自分の考えを変えることができました。このような針金,にんじん問題は「学習のネタ」とも言えます。このような「学習のネタ」を知っておくと,子どもたちが自分で実験,観察をしていなくても問題解決が楽しいと感じられる場面が増えるように思います。問題解決の楽しさをぜひたくさんの子どもたちに!

  • コメント ( 4 )

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  1. 牧 逸馬

    針金やニンジンを使った実践面白いですね。
    私は、大根でやったことがあります。
    また、野球のバットを水平に釣り合わさせることもやって
    いました。
    素晴らしい実践紹介ありがとうございます。

    • 内藤 美由紀

      返信ありがとうございます。大根は大きいので、インパクト大ですね。身の回りの物とてこ実験器をいったり来たりしながら、てこの原理が学べるといいなと感じました。

  2. 福澤 正人

    「しかし子どもたちが見出した問いが授業の問題につながりにくく,予想の理由が「勘」や「なんとなく」で語られることが多かったです。実験用てこを用いて自分の予想の理由を話す子どもの姿には全くつながりませんでした。」私は導入で児童に事前に予想させるのは好きではありません。「このような「学習のネタ」を知っておくと,子どもたちが自分で実験,観察をしていなくても問題解決が楽しいと感じられる場面が増えるように思います。」「理科の学習のネタ」を沢山紹介してください。書籍やURLを教えてください。よろしくお願いいたします。

    • 内藤 美由紀

      福澤先生、コメントありがとうございます。授業のネタは、一覧になったようなものはないので、地道に集めているところです。良いものがあったら、またこちらのサイトでシェアさせていただきますね。

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