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人の誕生の授業を「調べ学習」から「体験的な学習」へ 【理科専科.com】

 「調べ学習」を「体験的な学習」へ転換していくことは、子どもたちの学びをより深く、主体的なものにするための重要なアプローチです。ここでは、「ヒトのたんじょう」という単元を例に、具体的な方法と考え方をご紹介します。

はじめに:なぜ「調べ学習」に「体験」を取り入れるのか

 従来の調べ学習は、資料から知識を得ることが中心となりがちでした。しかし、調べ学習に体験的な活動を取り入れることで、子どもたちは内容を「具体的な感覚として理解する」ことができ、その結果「より身近なものとして捉え、主体的に学ぶ」ことができるようになります。子どもたちの「なぜ?」という疑問を大切にし、それを「体感」に変えることで、探究心を大きく引き出すことができます。

「体験的な学習」へ導く9つの工夫

 ここでは、子どもたちの疑問を解決し、理解を深めるために導入された9つの具体的な工夫をご紹介します。

1 出産場面の動画視聴

(1)目的: 学習への関心を高め、知識のスタートラインを揃える。

(2)方法: 実際に赤ちゃんが生まれるシーンの動画を厳選して視聴させます。苦しさや大変さを過大に受け取らないよう配慮が必要です。

(3)効果: 生まれたばかりの赤ちゃんの様子や産声を聞くことで、児童の関心が高まり、学習への主体性が向上します。

2 問題を見つける活動(Googleスライド、ふきだしくん、Canvaホワイトボード等の活用)

(1)目的: 子どもたち自身の疑問を明確にし、共有する。

(2)方法: ホワイトボードや付箋の機能を使って、疑問や知っていることを書き出す活動を行います。Chromebookで共同編集機能を使うと、複数人が同時に書き込み、付箋を動かして整理できます。

(3)効果: 視覚的に分かりやすく、友達と話し合いながら意見を出し合うことで、自分たちの学びを客観的に見渡すことができます。

3 <振り返りカードの活用>

(1)目的: 学習内容を日常生活と結びつけ、家庭での対話を促す。

(2)方法: 授業後に「おうちの人に話したいことは?」という観点で振り返りカードを記入させます。

(3)効果: 自分の誕生について保護者と直接話すことで、授業で得た知識が現実の問題として捉えられ、日常生活との関連が図られます。

4 胎児の大きさと重さ体験

(1)目的: 胎児の成長を具体的な感覚として体感する。

(2)方法:

・ 妊娠月数ごとの身長と体重、具体的な物(例:レモン1個)に置き換えた表を児童に渡します。

・様々な大きさのキューピー人形に砂を入れ、実際の重さを再現します(例:妊娠4ヶ月でレモン1個の重さ)。

・妊娠から出産までの38週を約4mのビニールテープで表し、その上に各週数の胎児モデルを置いていきます。

・初めから順に胎児を抱き上げていくことで、身長や体重の変化を自分の体で捉え、時間的・空間的な変化を体感させます。

(3)効果: 抽象的な数値だけでなく、実際に抱き上げることで、成長のイメージを自分事として深く理解できます。

5 妊婦さんの体重がどれだけ増えるか体験

(1)目的: 母親が経験する身体的負担を体感し、共感する。

(2)方法: 出産直前の胎児の重さ(約3000g)だけでなく、羊水や胎盤なども含め約10kgも体重が増えることを伝えます。児童からの「本当に大変なのか」という疑問に対し、砂のおもりをリュックに入れ、それを背負って歩いたり、座ったり立ったり、靴下を脱いだりする動作を体験させます。

(3)効果: 単に重いだけでなく、お腹をぶつけないように気を遣うなど、妊婦さんの身体的な大変さに気付くことができます。

6 胎児は羊水で守られている体験

(1)目的: 羊水の役割を科学的な知識と結びつけて理解する。

(2)方法: 4年生で学習した「水は押し縮めることができない」という性質を思い出させ、「なぜ子宮の中は羊水で満たされているのか?」という疑問から、空気ではだめなのかを考えさせます。その後、開封していない豆腐と水を抜いた豆腐をリュックに入れて動いてもらい、衝撃に対する違いを比較します。容器から水を抜いた豆腐は、激しく動いたりぶつけたりすると、崩れてしまいます。

(3)効果: 羊水が胎児を衝撃から守るという重要な役割を体感的に理解できます。

7 胎盤で血液は混ざらない実験

(1)目的: 胎盤の機能に関する誤解を解消し、科学的なプロセスを理解する。

(2)方法: 「へその緒を通じて食べ物が動いている」「母親と胎児の血液が混ざる」といった児童の疑問に対し、トマトジュースを血液の代わりとして使ったろ過実験を行います。ろ紙を胎盤の膜に見立ててろ過したものと、ろ過しないものを比較し、色を比べさせます。

(3)効果: 胎盤の膜を通して血液の成分が移動する仕組みを、具体的な実験を通して理解することができます。

8 スライドの活用

(1)目的: 調べた内容を協働的に整理し、表現する。

(2)方法: Googleスライドの共同編集機能を使って、教科書と同じようなイラストに調べた内容を書き込ませます。ページを追加したり、友達のまとめ方を確認し合ったり、間違いを指摘し合ったりします。

(3)効果: 視覚的に分かりやすく、対話的な学びを促しながら、効率的に情報を整理・共有できます。

9 ワークシートの活用

(1)目的: 複数の生命現象を比較し、共通性と多様性、生命のつながりを理解する。

(2)方法: 単元の終わりに、植物の発芽と成長、メダカの誕生、ヒトの誕生を振り返り、ワークシートを使って成長過程の差異点や共通点を整理します。

(3)効果: 生き物の命が受け継がれていくことや、時間的・空間的な見方を使って比較する力を養うことができます。

ぜひ、今回ご紹介したアイデアを参考に、ご自身のクラスで「体験的な調べ学習」に挑戦してみてください。

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