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子どもたちの考えを取り入れた実験方法の工夫とタブレットを活用した観察記録 ~4年「雨水の行方と地面のようす」の教材開発~【理科専科.com】

1.はじめに

 新学習指導要領の中で追加された内容に第4学年「雨水の行方と地面の様子」がある。指導要領解説には、次の事項を身に付けることができるよう指導することになっています。

ア 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
(ア)水は、高い場所から低い場所へと流れて集まること。
(イ)水のしみ込み方は、土の粒の大きさによって違いがあること。
イ 雨水の行方と地面の様子について追究する中で、既習の内容や生活経験を基に、雨水の流れ方やしみ込み方と地面の傾きや土の粒の大きさとの関係について、根拠のある予想や仮説を発想し、表現すること。

 そこで、雨が降っているときの校庭の様子や雨が降った後の校庭の様子を想起させたり、実際に見に行ったりして観察させることによっていろいろな気付きを出させました。校庭で水たまりができた土と水たまりができない土を採取し違いを調べる学習に取り組みました。そこで、今回は子どもたちの発見や気付きを生かした授業づくりについて実践を通して述べていきたいと思います。

2.実践事例 第4学年「雨水の行方と地面の様子」

(1)タブレットを使って写真や動画で記録する

 雨が降っている時、校庭に降った雨水はどのように流れていくのかや雨がやんだ後、水たまりはどこにできるのかを写真や動画で撮影し記録をとりました(図1、図2)。その際、【なぜ水たまりができたのか】気付いたことを話し合いました(図3)。

 そして、水たまりができる場所として、穴があいているところ、へこんでいるところ、ごつごつしているところ、坂になっているところ、に気づきました(図4)。

図1 雨水の流れを動画で記録する子どもたち
図2 校庭の水たまりの場所を写真で記録

図3 ブランコの下には大きな水たまりができている
図4 子どもたちの気付きの記録

(2)校庭で水たまりができた場所を図に表す

図5 水たまりのできた場所と気付きを黒板で共有

(3)土の採取

 水たまりができた場所(ブランコの下の土)と水がたまらなかった場所(砂場の土)を採取しました。その後その土を乾燥させ、粒の様子を虫めがねで観察しました。すると子どもたちは、粒の大きさが違うことにすぐに気付きます。

 図6 砂場の土 
図7 ブランコの下の土
図8 乾燥させてから粒の観察

(4)水のしみ込み方の比較実験の工夫

 1回目の実験(図9)は、プラコップの底に穴を開けガーゼを敷き、それぞれの土を入れた物を準備し同量の水が全て下のビーカーにたまるまでの時間を調べて記録しました。すると、子ども達から「これは水が土の中を通り抜ける実験だから土の中に水がしみこむ実験にならないよ。」という意見が出ました。そこで、2回目は、土の中に水がしみこむ実験方法を子ども達と考えました。

図9 1回目の実験

【実験方法の工夫】

 子どもたちは、タブレットで水がしみこむ様子を動画撮影しました。すると水が砂にあっという間にしみこむ様子に子どもたちの歓声が上がった。それに対し水たまりができた土(ブランコの下)は、水がたまり、3分以上経ってもしみこんでいかない様子にびっくりしていました。また、撮影した動画を繰り返し見直し、グループで考察することができました。

図10 工夫した2回目の実験。200mlの土に50mlの水を入れ、全てしみ込むまでの時間を計測し、比較した

図11 実験の様子をタブレット端末に録画。その後、グループで繰り返し視聴し、考察に生かすことができた

表1 実験結果 砂場の土(単位:秒)

1班2班3班4班5班6班7班8班
1320171312121212

*結局、水たまりができた土(ブランコの下)は、30分以上経っても水が全てしみ込まず、水が土の上にたまっていた。

(5)考察

 観察・実験の結果から、わかったことを各自ロイロノートにまとめて提出箱に提出させ、学級全員の考えを閲覧し、共有することができました。友達の考えと同じだと共感したり、違う考え方を見て自分の意見を修正したりする姿が見られました。

図12 ロイロノートに自分の考えをまとめ、提出箱に提出する

図13 ロイロノートで提出された子供達のまとめの一部

 授業の最後に、次のようにまとめを行いました。

先生:なぜ砂は水たまりができなくてブランコの下の土は水たまりができたのかな。
   粒の大きさで考えてごらん。
児童:砂は粒が大きいからすき間がたくさんあるから水がしみこみやすいと思う。
児童:ブランコの下の土は粒が小さいからほとんどすき間がないから水が上にたまると思う。
図14 授業のまとめの板書

(6)生活に活かす

 身近な事象で振り返るために駐車場にはなぜ水たまりができていないのか写真を見て考えます。

先生:なぜ砂利が敷いてある駐車場には水たまりがないのかな。
児童:砂利は粒が大きいので水がしみこみやすいからだと思う。

このように、粒が大きい砂利が敷かれているから、水たまりができないことに気付きました。

図15 砂利が敷かれた駐車場の写真を提示

3.児童の感想

 感想を読むと、「砂場の土はつぶが大きいから水たまりができない」や「土のつぶが大きいほど水たまりができないことがわかった」と書かれてあり、水のしみこみ方は、土の粒の大きさが関係していることを理解できたことがわかります。

4.おわりに

 今回、子どもたちの発見や気付きを活かした実験方法で授業をしました。教科書の実験方法だけにとらわれず子どもたちの疑問や考えを活かした実験方法でも理解を深めることができることに新しい気付きを得ることができました。

 一人一台タブレットを活用し、写真や動画を撮りました。すると、どんなところに水たまりができるのか気付きました。また、水のしみこみ方を何度も再生することにより、水のしみこみ方には粒の大きさが関係していることを発見することができました。また、自分の考えをロイロノートにまとめ友達と共有することで他の友達の考えを見て、同感したり、違う考えを参考にしたりして自分の考えを修正加筆したりする等、深い学びにつながりました。

【引用・参考文献】

文部科学省(2018)「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説理科編」東洋館出版社

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