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「均一にものは溶けている」と科学的に理解するために ~教材の紹介~【理科専科.com】

 5年生ものの溶け方の学習では、「物が水に溶けても、水と物とを合わせた重さは変わらないこと」「物が水に溶ける量には、限界があること」「物が水に溶ける量は水の温度や量、溶ける物によって違うこと。また、この性質を利用して、溶けている物を取り出すことができること。」を学習します。

 また、「水溶液の中で、溶けている物が均一に広がることにも触れること。」とされています。しかし、「重さのあるものは下に落ちる(水中では沈む)」や「味噌汁で下に溜まった味噌をかき混ぜる」といった子どもの素朴概念は根強いことが多いです。色付きのコーヒーシュガーなどで実験を行い、視覚的に確認しても食塩に置き換えると「下の方が上よりも食塩が多く溶けている。」と考えている子どもは少なくありません。

1.実験道具の紹介

 透明な水溶液の均一性を確かめるための実験方法を構想していると「水溶液の上と真ん中と下のそれぞれから採取して右の図のように蒸発させて、その量を比べる」という方法を構想する子どもがいるでしょう。

 ビーカーなどで作成した水溶液に駒込ピペットを差し込んで採取するという方法もあります。しかし、採取しようと駒込ピペットを差し込むと、「混ざってしまう!」と攪拌することによって条件が揃わないことを危惧する子どもがでてきます。だからといって、ピペットを差し込んだまま、攪拌することもできません。

横向き
正面から

【材料】
・ペットボトル(1.5ℓの炭酸ペットボトル)
*炭酸が入っているペットボトルの方が弾力があり、きりで穴を開けた時にきれいに穴が開きます。
・きり
・ゲル状の接着剤
・シリコンチューブ(3㎜×5㎜)
【製作の手順】
①ペットボトルにシリコンチューブの直径より小さめの穴を開ける。(上・中・下)
②穴にシリコンチューブを入れこむ。
(奥に押し込みすぎると食塩水を振って混ぜる前の段階の物がチューブに入り込んでしまうので、入れ込みすぎないようにしてください。)
③シリコンチューブの周りをボンドでとめる。
④水を入れてもれないかをチェックして完成。

2.実験道具の活用方法と活用の様子

  • 水溶液を作成後に攪拌される心配がない。
  • 1.5Lのペットボトルを使うことで、水溶液の上・中・下の位置の差が明確になる。そのことによって、予想や仮説との差による驚きが生まれる。(深い理解へ繋がる)
  • ピンチコックを開くだけなので、3点の水溶液の採取が簡単。 の大きく3点です。

の大きく3点です。

実験の手順】
①ピンチコックでシリコンチューブを止める。
②食塩水をつくる。(濃度は目的によって変えてください。)
③時間をおく。(単元の内容による)
④ピンチコックを開きビーカーに移す。
(上から順番に開いていけば簡単に採取できます。)
⑤蒸発皿で蒸発させる。
⑥上・中・下、それぞれの蒸発皿の重さをデジタルスケールで量り、
元の蒸発皿の重さより何グラム増えたのかを記録する。
(蒸発皿は一つ一つ重さが微妙に異なるので注意が必要です。)

【実験の結果】

 実践を行った際には、どの班も0.1g~0.4gの食塩が上・中・下の地点から量ることができました。食塩を蒸発させた時の蒸発皿の見た目だけでなく、重さを量っても同じ量が出たということから、「食塩水はまんべんなく溶けている。」ということをより科学的に明らかにしている子どもの姿が見られました。

実験の様子

【子どもの考えの変化】

 この児童は、予想で「上では、食塩と水は結び付きにくい」と考えていました。物によって重さがあるので、結び付く前に沈んでしまうと考えていたからです。実験を通して、図から考えが大きく変容しているのがわかります。考察では、「水が食塩を食べる」「水の部屋に食塩はどこであっても入り込む」と溶媒(水)と溶質(食塩)の関係についてより妥当な考えを作り出していることがわかります。

3.おわりに

 理科の学習においては、科学的に問題解決を行うことが大切にされています。「科学的」とは、以下の通りです。

「実証性」・・・考えられた仮説が、観察、実験によって検討することができること
「再現性」・・・仮説を観察、実験などを通して実証するとき、人や場所を変えて複数回行っても同一の実験条件下では同一の結果が得られること
「客観性」・・・実証性や再現性という条件を満足することにより、多くの人々によって承認され、公認されるという条件

 一方で、理科では「水溶液に溶けた食塩」「燃焼した前後の酸素、二酸化炭素の量」等のように、人の目には見えないものの性質や変化を対象として扱うことは少なくありません。目には見えないものを証明する手段の一つとして「数値にして表す」ことは有効な場面が多いと感じています。

 教科書に書いてあるから~、塾で習ったから~ではなく「自分の目ではっきりと確かめた!だから納得できた!」と科学的に解決することで理解が深まることを子どもたちが実感できるように、教材開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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