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下級生に学習成果を伝える活動を通して、命を大切にする気持ちを育てる理科授業の実践 ~6年「植物の体のつくりとはたらき②水との関わり」~【理科専科.com】

 理科学習では、命を扱う単元が多くあります。なんとなく指導していたら学習は終わってしまいますが、教師が「命」という観点を意識して指導することで、子どもたちが命について考える機会となり、命を大切にしようとする気持ちを育てることができるのではないかと思います。今回は、6年の「植物の体のつくりとはたらき②水との関わり」においての実践を紹介します。

 学習を進めるにあたって大切なことの1つに「目的意識」があります。植物を育てる活動はどの学年でも行われていることもあり、この単元では「植物と水との関係性を学びながらその大切さを下級生に伝える」という目的意識を持たせ学習を進めていきました。

 校地内の植物に目を向けさせながら問題の見出しを行うことで、各学年がさまざまな植物を育てていることに気付き、よりよく育てるために最高学年の自分たちにも何かできることがないかと考えるようになりました。そこから生まれたのが「下級生に伝える」という目的です。目的が明確になってからの子どもたちは本当に主体的に活動していきました。まず、何が分かっていたら下級生に伝えることができるのかを考え、自分たちが学ぶべき内容を整理していきました。


<この単元で子どもたちが学びたい内容>
 ①植物に水をあげる理由を知りたい。
 ②植物はどこから水を取り入れているのか知りたい。
 ③植物の水の通り道を調べたい!(色水を使ったらいいかもしれない!)
 ④植物が育ちやすい水の量を調べたい。(植物によって違うのか?)
 ⑤より良く育てるためにできること。(間引きって下級生は知っているかな?)

※学習問題を設定しながら、その解決への見通しを持てているものもありました。また、じっくり調べて分かったことを伝えてあげたいという思いが強く、全校のリーダーとしての自覚を高めるのにも有意義な活動だったように思います。

 単元の学習を進めていくと、目的が明確になっていると子どもたちの学習に向かう力は目覚ましいものがあり、普段の学習よりも意欲的に進めていくことができました。学びたい内容の学習を終えた後、子どもたちから「まだ調べたいことがある!もっと調べないと下級生に説明はできない。中途半端の説明はしたくない。」という願いを持ち、もっと調べたいことを調べる時間を設定しました。


<もっと調べたいこと>
 ①「根→茎→葉」の水の通り道は、「茎→葉」でも水が通るのか。
 ②同じ植物で、根と茎の水の吸い上げの違いを比較したい。
 ③ホウセンカ以外の植物の水の通り道を調べてみたい。

 ①の実験を通して、茎からも水を吸い上げるが、根よりも量が少なく植物が長持ちしないことを確認し、根に水をあげることの大切さを再認識していました。調べたい内容は同じですが、②のように根と茎からの水の吸い上げる量を比較し、根の方が水を吸い上げることを確認していた子たちもいました。③の実験では、学習したことを一般化したいと感じた子どもたちが、様々な植物を使って水の通り道を確認していました。そうすることで、どの植物も「根→茎→葉」で水を吸い上げることを確認することができました。

 子どもたちの納得がいくまで調べた後は、いよいよ下級生に伝える準備を進めていきました。事前にどんなことに気を付けたらよいかを全体で確認すると、次のような意見が出されました。


<気を付けること>
 ・字を大きめに書くこと
 ・ひらがなを使うか、ふりがなを書くこと。
 ・絵や写真を使って、見やすく分かりやすく。
 ・言葉は短く。読みやすいようにする。
 ・色を付けて視覚的に見やすくする。
 ・伝えたいことを明確にする。

 4月から、下級生との関わりを密にしてきたからこそ、気を付けることをまとめる必要もなかったのかなと思うくらい、子どもたちが下級生のことを考えていたのには驚きました。また、子どもたちの学んだことを伝えたいという思いの強さにも驚き、学習する目的が明確であると子どもたちの意欲につながるのだと改めて実感した瞬間でした。

 また、どのように伝えていくのかを気にしていた子どもたち、発表する時間を作る・ポスターをかいて貼るなどなどたくさんの方法が出されましたが、学習にもかなり時間がかかってしまっていたこともあり、今回は掲示物を作り広くさまざまな学年に伝える方法で進めていくことにしました。子どもたちが作成した掲示物は次のようなものです。

 

子どもたちが作った掲示物の部分写真です。

 

子どもたちの作った掲示物を確認すると、下級生に伝えたかった内容が見えてきました。簡単にまとめてみると、大きく3つにまとめることができました。


①植物は成長するのに水を使っている。
 ・水は、植物にとってなくてはならない存在であること。
 ・人間の食べ物や水分と同じくらい水は植物にとって大切であること。
 ・水をあげなければ枯れてしまうこと。
 ・水は蒸散してどんどん使われるので、毎日あげる必要があること。

②どの植物にも水の通り道がある。
 ・「根→茎→葉」の順番に水が通ること。
 ・切り花の場合は「茎→葉」になること。
 (水につけることで少しでも長く花を楽しめる。命を持続できる。)
 ・水は根に向かってあげることが大事であること。
 (より吸収しやすい状態で水をあげることが大切)

③命を大切にする気持ちを育てる。
 ・毎日水をあげることで植物をしっかり育ててほしい。
 ・植物も生きていることを理解してほしい。
 ・植物だけではなく、命あるものの命を大切にしてほしい。

 このような学習展開をすることで、学習者である6年生はもちろん、6年生の発信を見た下級生にも命について考えるきっかけを与えることができました。子どもたちに「命」を意識させながら指導してきましたが、学習の最後に印象的な場面と出会うことになりました。それは、ある児童が「実験に使う植物の命はどのように考えたら良いですか?」という発言です。その児童は、日頃の学習を振り返りながら、人が植物の命を奪い実験をしたり、植物の命をもらって生きていたりしていることに気付き、今回の学習も実験ではなく動画を使って学習することで植物の命を守ることにつながるという思いを抱いていました。真剣に命と向き合い、考える機会があったことで子どもたちなりに深まりを持つことができた事例だと実感しました。

 このように、指導者がちょっと意識をしながら学習展開を計画して指導することで、理科の学習内容がより深まります。どの教科指導においてもそうですが、「命」を意識した指導を繰り返すことで、子どもたちの意識も少しずつ変化していくのではないかと考えます。道徳的な指導は特にすぐに身に付くものではありません。教科学習の中にも意図的に組み入れながら子どもたちに働きかけていく必要があるのではないでしょうか。理科はそれがしやすい教科ではないかと感じています。

  • コメント ( 1 )

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  1. 新井友博

    短い単元でも、目的意識次第で学ぶ姿勢が大きく変わることがわかりました!
    実際に他の学年が育てている植物で実験をさせてもらうのま、面白そうですね!
    また、最後のポスターなども、これからはICTの活用が期待されますね!

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