自然を愛する心情を育てる授業実践 〜第6学年「植物の養分と水の通り道」「生物と環境」〜【理科専科.com】

小学校学習指導要領では、理科において育成する資質能力の一つとして、「自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度」を設定しています。この中の「自然を愛する心情」とは、生命の連続性や神秘性に思いを馳せたり、生物が互いに関わり合いながら生きていることについて考えたりすることを通して育まれる、生命を尊重しようとする態度のことを指します。このような自然を愛する心情は、どのように授業を行なっていけば育てることができるのでしょうか。今回は、第6学年の「植物の養分と水の通り道」と「生物と環境」の単元を組み合わせた実践の紹介をします。
1.目的をもって植物を育てよう
自然を愛する心情を育てるには、目的をもって繰り返し対象と触れ合うことが必要不可欠です。今回は、単元に入る前にジャガイモを育て収穫しようという目標をたてました。ジャガイモの水やりや観察など、中休みにジャガイモと何度も関わることを通して、子どもたちのジャガイモへの愛情は少しずつ芽生えていきました。ジャガイモが育ってきた頃、子どもたちが「そろそろジャガイモ収穫できるんじゃない?」と言うので、試しに1株掘ってみると、まだ食べられないくらい小さないもが付いていました。「栄養をもらってもっと大きくなるはず。」という子どもに、「どこから?」と問い掛けることで、「小さなジャガイモがもらうはずの栄養はどこから来るのか」という問題を見いだしました。このように、目的意識をもって植物を育てることで、愛着が芽生え、自分事として問題解決に取り組むことができます。
2.様々な植物で試してみよう
学習が進み、ジャガイモは葉に日光が当たるとでんぷんができるのか確かめました。そうすると、「ジャガイモ以外は?」と考える子どもたちが現れました。そこは、「みんなはどう思う?」と問い返すチャンスです。子どもたちは、「あの植物でやってみたい。」「水草はどうなんだろう。」と考えを巡らせました。このように、授業の中心として扱っていた植物以外に興味をもった子どもは積極的に取り上げ、皆で確かめてみると良いでしょう。
実際に他の植物でやってみると、アジサイやシロツメクサはヨウ素液の反応が表れます。一方で、イネ科のような単子葉類の植物は、葉に糖として養分を貯めるため、ヨウ素液の反応は表れません。このように、様々な植物で試してみることで、「植物によってちがうんだ!面白いな。」と、共通性・多様性の見方が働き、子どもの興味関心をより一層深めることができます。


タブレットを使って、様々な植物のヨウ素液反応の結果を共有している様子
3.地球の歴史に目を向けてみよう
この実践は、「植物の養分と水の通り道」の学習内容に加え、「生物と環境」のア(ア)「生物は、水及び空気を通して周囲の環境と関わって生きていること」の内容を組み込んで行いました。子どもたちは、植物は日光が当たるとでんぷんができることや、根、茎及び葉には水の通り道があり、根から吸い上げられた水は、主に葉から蒸散により排出されることを学びました。
その中で、植物の葉ででんぷんができる際、二酸化炭素を吸って酸素を出しているということを聞いたことがあった子どもがいました。そこで、本当に植物は日光を浴びているとき二酸化炭素を吸って酸素を出しているのか確かめました。子どもたちは、実験で得られた数値を人の呼吸における気体の割合の変化と関連付けながら、「植物のおかげで私たちは生きていけるのだな。」と実感していました。
学習の最後に、子どもたちに地球の大気組成の変化を表したグラフを提示しました(図1参照)。地球が誕生した当初は地球に酸素はなく、植物の祖先にあたる生き物や植物が二酸化炭素を酸素に変えてきたことで、現在の地球には約21%の酸素があるということを伝えました。子どもたちはより一層、植物のおかげで自分たちが生きていけるということを実感し、足元に生えている名前の知らない植物も大切にしたいという思いを高めることができました。

以上のように、目的をもって繰り返し関わりながら植物を育てること、育てている植物から他の植物へと追求の対象を広げていくこと、地球の大気組成の変化を提示することを通し、子ども達は自分の命と植物とのつながりを実感し、植物を大切にしようとする態度が育っていきました。
しかし、自然を愛する心情を育てるときに最も大切なのは、日々自然を愛する心情を育てようと教師が意識することです。一つの単元で自然を愛する心情は育ちません。教師が日頃話していること、授業の中で子どもに語りかけること、子どもが体験すること、その一つ一つが少しずつ子どもの心に沁み渡り、子どもの自然を愛する心情は育っていくのだと思います。自然を愛する子どもを育てるために、まずは私たち教師が自然の美しさを見付け、感動し、大切にしようとする意識をもって生活してみることから始めてみませんか?
試しにじゃがいもを一株抜いてみるというのが最高ですね!
あれ、育ってない、、、という事実から問いが自然と生まれていく流れも最高です!
さまざまな植物でヨウ素液を使った実験をするのも、共通多様の視点で見れる
とてもいい機会ですね。
そのために時数をしっかりと確保しないとなぁと思いました!