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問題を科学的に解決するための教材~5年「流れる水の働きと土地の変化」【理科専科.com】

理科の学習においては,問題を科学的に解決することを大切にしています。ここで,小学校理科における「科学的」という言葉を確認しておきます。科学的に解決するとは,「実証性」「客観性」「再現性」の3つの側面から検討することです。

・「実証性」考えられた仮説が,観察,実験によって検討することができるという条件
・「再現性」仮説を観察,実験などを通して実証するとき,人や時間や場所を変えて複数回行っても同一の実験条件下では同一の結果が得られるという条件
・「客観性」実証性や再現性という条件を満足することにより,多くの人々によって承認され,公認されるという条件

 小学校学習指導要領解説(平成29年告示)解説より

5年「流れる水の働きと土地の変化」の学習において観察,実験を行う際,土で作った山などに水を流し,地面の様子がどのように変化するのかを追究します。このように観察,実験を通して,浸食,運搬,堆積について学ぶ際,通常は屋外で山を作ってグループごとに水を流して観察,実験を行うことが多いでしょう。しかし,使用する山の高さや水の通り道などが異なっていることによって,考察場面でグループ間の実験結果を共有しにくいという問題が起きてしまいます。また,室内でプランターなどを活用した実験器具はスケールが小さく,流れる水の働きを捉えにくいという問題もあります。これでは,科学的に解決することが難しくなってしまいます。そこで,より科学的に問題を解決かつ,天候に左右されないよう室内で実験できることをねらいとした実験器具を紹介します。

【実験器具について】
・台の大きさ:110㎝×40㎝

・砂の厚さ:7.5㎝
・使用した砂の量:約9kg
・川の深さ:2.5㎝
【準備したもの】
・発泡箱
・木のポール
(サイドに木を貼って補強している)
・けい砂
・フェルト(薄手のプラスチックボードを覆っている)

これまでも大きめの実験器具(60㎝×30㎝)を使用していたのですが,それでもすぐに砂全体が流れてしまい,広範囲での運搬・堆積の様子を観察しにくく,また,底がすぐに見えてしまい,川底の土の浸食を捉えにくいという問題があり,模型と実際の川を十分に結びつけられませんでした。そのため,検討を重ねた結果,サイズが少し大きくなってしまいましたが,これくらいの大きさが必要ではないかと考え,グループの数だけ準備をしました。

川の形については,スタイロフォーム(建物の断熱材として使われる発泡プラスチック系の建設材料)を活用し,川の形をかたどって切り取り,上の写真のように押し込むことで,川の形が出来上がります。これを用意することで,同じ条件下での実験が可能になり,実証性,再現性。客観性が確保された中での学習が可能になります。

また,実験器具全体を傾けることによって,水の流れを速くすることができます。それによって水の流れが速くなった場合,浸食,運搬,堆積の作用のちがいについても調べることができます。

ペットボトルの水を流す前と流した後の様子

【共通理解することができた実験結果】

≪この実験器具を用いたことによる成果≫
・実験器具を大きくすることで,運搬されたり下の方に堆積したりする土砂の量がこれまでの実験器具よりも明確に分かるようになり,侵食・運搬・堆積の様子が明瞭に観察できた。
・使用する砂の量を多くし,深さを確保することで,水を流した後に「川底も削れるんだ」ということや「侵食した土砂が下に堆積して,川があふれることがある」ということに気づくことができた。
・流れる水の働きを同条件のもとで行うことで,グループ間の実験結果の比較が容易になった。内側より外側の方が浸食の作用が大きいことなど,他グループとの交流の際に共通理解のもとで進めることができた。
・同条件の下で繰り返し実験を行うことが可能となったことで,水の量を変える実験など,量的・関係的な見方を働かせながら実験を進めることにつながった。

このように,実験器具を工夫することによって,どのグループも同じ条件下で実験を行うことができます。浸食,運搬,堆積の働きがあることを理解しやすくなるだけではなく,水量が増えたときの流れる水の働きを調べることもできますので,単元を通して活用することができ,学びに連続性が生まれます。

教材の開発は時間がかかりますが,今回の器具は次年度以降も使用することが可能なため,長い目で見てもメリットもたくさんあります。ぜひ,「科学的」を意識しつつ様々な教材開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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