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ICTを活用した事象提示からの問題づくり ―3年「音の性質」の実践―【理科専科.com】

 3年「音の性質」の学習において、「物から音が出るときは、物は震えていること」を知識として習得することが学習指導要領に示されています。問題解決の活動を通してこの知識を習得するとなると、子どもが音に関する自然の事物・現象に出合い、「物から音が出ているときは、物は震えているのかなあ?」と疑問を抱き、その疑問から問いを見いだしていくような授業展開がなされる必要があるということです。しかし、子どもたちが自発的にこのような疑問を抱くには、どのような自然事象との出合いが考えられるでしょうか?

 この単元を授業された経験のある先生方ならば、このことがなかなか難しいと感じるのではないでしょうか。どのような難しさがあるのかというと、「震え」という視点をこちらから与えないと、こちらが着目してほしい部分とは関係のない気付きが多数挙げられ、気付きの集約に苦慮してしまうということです。かといって、自発的に震えに気付くように、楽器に「震えが視覚化される道具」を取り付ける等の細工をしてしまうと、ここでの共通体験が問題解決の際に子どもたちが実験する内容とかなり似通ってしまうのではないかという懸念もあるでしょう。

 このような場合、無理に問題解決の活動とせずに、知識として全体で確認をし、その先の部分、つまり「音の大きさを変えたら震えは〜?」という部分を問題解決として進めていく展開はよくあることです。しかし、ICTを効果的に活用することで、「物から音が出ているときは、物は震えているのかなあ?」という疑問を自発的に抱かせることができます。「震え」という視点をこちらから与えなくても、楽器に細工をしなくてもよいので、おすすめです。では、その具体的な流れについて提案していきます。

1  ICTの活用の仕方(授業展開)

 はじめに、音あてクイズをして、子どもたちの音への興味・関心を高められるようにします。「音楽室にある楽器の音を今から流すので、何の楽器の音か考えましょう。」と投げかけて、「シンバル、木琴、大太鼓、小太鼓、トライアングル、ギター」を鳴らしている様子を録音したものを流します。子どもたちは興味津々で、次々と何の楽器かをあてていきます。

 

 次に、「実際に今クイズに出された楽器を音楽の先生からお借りしてきているので、全ての楽器に一通り触れてみましょう。」と伝え、それぞれの楽器を使って音を出す共通体験の時間を設定します。子どもたちは興奮気味に「すごい!」「けっこう大きい音だ!」を口々に呟きながら楽器から音を出していきます。

 一通り全ての楽器に触れられたところで、「じゃあ改めて答え合わせをしましょう。」と言い、6つの楽器の音を出している動画を流して、自分が実際に触れた時と同じ音だったかを確認していきます。(動画:「6つの楽器の音」参照)実はこの動画に秘密があります。動画を見ると分かるように、どの楽器も3回程度素振りがあり、その後3回程度音を出しています。しかし、最後のギターだけは、3回の素振りの後、弦を3回はじいているのですが、1回目にはじいている時だけ編集で消音しています。これを見た子どもたちは一斉に「え!?」という反応を見せます。

 ここで「なんで、今「え!?」って言ったの?」と問い返すと、「音が出ていなかったから。」と言ってきます。「ちゃんと出てたじゃん。」と言うと、「違うよ、4回目の部分が出ていないのがおかしいんだよ。」と熱心に説明してくるので、その部分の動画をもう1度流し、「どうしてここがおかしいの?」と問うと、「弦が震えているのに、音が出ていないから。」と答えます。このやりとりを通して、子どもたちは「音が出ている=震えている」という因果関係に着目していきます。「あっ、先生間違えちゃったみたい。」と言い、正しい動画を見せると「やっぱりそうだった!」と子どもたちは納得します。

 

 その後、動画だけだと不十分だから、実際のギターを見て確認するよう促し、全員でギターをもう1度操作し、「ギターの音が出ている=ギターの弦が震えている」という関係をおさえます。ここで大切なことは、この逆の関係も確認するということです。「じゃあ、ギターの音が出ていない時は?」と促し、「震えていない」ということを全体で確認します。ここまで確認すると、先ほどの共通体験を振り返り、「そういえば、震えている弦を無理矢理指でおさえたら、急に音が止まったよ!」と言う子がいるので、大きく価値付け、その点も全体で共通体験させるとよいでしょう。

 ここまで学習が進むと、子どもたちは問いにつながる呟きを次々とし始めます。「じゃあ、他の5つの楽器も震えているのかな。」「震えてたと思うよ!」「いや、震えてないものあるよ。」という話し合いが起こるので、「意見がわれているけど、みんなが明らかにしたいことは何?」と問いかけると、「他の楽器も音が出ている時、ギターと同じように震えているのだろうか。」という趣旨の問題が見いだされていきます。

2  ICTを用いる時の注意

 理科は、自然の事物・現象を学びの対象とする教科です。そのため、自然の事物・現象から問題を見いだし、科学的に問題解決していくことが何よりも重要です。この点を踏まえると、ICTは便利なツールではありますが、使い方を間違えてしまうと、画面上で起きている事象を対象とした学びになってしまい、それは理科の学びではなくなってしまうので、とても注意が必要になってきます。今回も問題を見いだすために、その全てをICTに委ねるのではなく、「物から音が出ている=震えている」という因果関係に着目するきっかけとしてICTを活用し、それ以外の部分は実際の楽器に触れ、そこから出る音と震えを諸感覚を働かせて捉えることを大切にして授業を構想しました。ぜひ先生方もICTを効果的に活用した理科の問題解決にチャレンジしてみてください。

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