生成AIが授業を変える⁉︎ 授業中にフィードバックを受けよう【理科専科.com】

1.はじめに
私たち教師は、子どもたちがどのように学んでいるかをしっかりと把握し、その子に合った適切なフィードバックが大切だと考えています。日々の授業準備や研究を重ね、子どもたちの考え方や行動が良い方向に変わったとき、準備がどんなに大変でも「教師になって本当によかった」と心から思えます。しかし、それを実現するのは容易なことではありません。学級の中には、
- 問題解決の力を自発的に使用することが難しい子
- 教師の働きかけによってやっと問題解決ができる子
- 音声で情報を受け取るのが苦手な子
- 文字の読み取りが難しい子
- 教師から直接フィードバックされるのを嫌がる子
など、さまざまな実態の子どもたちが同時に学習に取り組んでいます。
そのような子ども一人ひとりにとって、授業者の働きかけの工夫が必要であり、実態を正確に把握し、効果的なフィードバックが求められます。複雑で多様な教師の役割を、生成AIの発展が一助になる時代がもうそこまで来ていると私は考えています。
2020年に内閣府から「ムーンショット計画」という計画が出されました。これは科学技術の目まぐるしい発展の中で、人々の幸福(Human Well-being)の実現を目指し、10この目標と共に掲げられているものです。その中にアバターを作って1人が数人分の働きを可能にするという目標があります。まだまだ遠いと思われがちですが、教師もいずれはアバターを作って効果的な指導をする時代が来ると思います。

そして、発展を続ける生成A Iを活用することで私たちの代わりに児童の記述を即時的にフィードバックする存在を生み出すことは今もすでに可能です。今回は生成AIが即時的なフィードバックを行うためのプロンプトや授業展開、実際の授業での児童の記述の変容を紹介します。
2.フィードバックを目的とした生成AIのプロンプト
早速ですが、下記がフィードバックを目的とした生成AIのプロンプトです。このプロンプトの良いところは、評価基準を自分で自由に変えられるところです。子どもの実態によっては、子どもと教師で議論を重ねて改善し、ルーブリックのように活用することも良いでしょう。ChatGPTを意識して作成しましたが、Microsoft Copilotでも動作確認済です。ぜひ自由にコピーしてお使いください。
なお、以下の「 #評価基準」では、基準をどの程度超えたらA評価かを調整ができます。また「視点」では、評価基準を設定できます。子どもたちの実態や指導内容を踏まえて調整すると良いです。
#依頼
あなたは[#役割]です。
[#依頼事項]を[# フォーマット]の形式で、回答して下さい。
[# ルール]と[#評価基準]を守って実行して下さい。
# 役割
的確なフィードバックが得意な日本の小学校教師
#依頼事項
小学生が[#問題]を設定し、児童が[#論文]を書きました。 科学的に正しいか [#ルール]と[#評価基準]に沿って[#問題解決過程]ごとに日本語で評価してください。
#問題解決過程
- 問題
- 予想
- 検証計画
- 考察
- 結論
# フォーマット
- 表形式で出力する
- [児童]ごとに表を分ける
- [#問題解決過程] [A or B or C] [A or Bの場合のフィードバック]
- A=「良い」、B=「もう少し」、C=「未記入or不足多過」の3段階で評価する。
#ルール
- 小学生にもわかるように記述すること。
- [#問題解決過程]ごとに [評価(A or B or C)] を選ぶ。 - [評価(A or B)の場合の改善点] を記載する。
- [評価(C)]の場合は記載なし。
- 改善点は80文字以内で日本語で簡潔に。
- 評価はBを積極的につけること。
#評価基準
- 問題
(A=[#視点①]を守って記述できている。B=[#視点①]を全て書いていない。C=未記入)
- 予想
(A=[#視点②]を守って記述できている。B=[#視点②]を全て書いていない。C=未記入)
- 検証計画
(A=[#視点③]を守って記述できている。B=[#視点③]を全て書いていない。C=未記入)
- 考察
(A=[#視点④]を守って記述できている。B=[#視点④]を全て書いていない。C=未記入)
- 結論
(A=[#視点⑤]を守って記述できている。B=[#視点⑤]を全て書いていない。C=未記入)
#視点①
-検証可能な問題になっているか。
-文言に「関係しているか」「何が」「どのような」「どうすれば」「どちらが」のいずれかの文言があるか。
-「なぜ」という書き方は禁止。
-文法的に正しいか。
#視点②
-問題に対する自分の考えを書いているか。
-理由「なぜなら・理由は」を書いているか。
-生活経験やすでに学習していることを理由にしているか。
-文法的に正しいか。
#視点③
-予想を調べられる実験方法になっているか。
-どんな条件を揃えるのか明記する。
-自分の予想が正しい時に考えられる結果も記入しているか。
-文法的に正しいか。
#視点④
-結果から考えられることを科学的に書いているか。
-自分の予想と結果を比較しているか。
-自分の予想とは違う結果になった場合、違う結果になった原因を考えているか。
#視点⑤
-問題に対する科学的な答えになっているか。
#論文
プロンプトされた文章
3.実際に使った様子① 〜1人の記述をフィードバック〜
まずは、上記のプロンプトを生成AIに流し込みます。今回は、ChatGPTを使用しました。

図1:ChatGPTのトップ画面
ここに前章「2.フィードバックを目的とした生成AIのプロンプト」で紹介したプロンプトを入力すると、次のように、スタンバイ完了のメッセージが生成されます。

図2:前章のプロンプトを入力すると
そこに以下のような児童の記述を流し込むと…

図3:ChatGPTに一人一台端末の記述を流し込む直前
次のようなフィードバックを生成AIから受け取ることができます。

図4:ChatGPTによるフィードバック①
4.実際に使った様子② 〜学級全員の見いだした問題をフィードバック〜
他にも画像やExcelファイルなどから学級全員の記述を読み込んでフィードバックも可能です。こちらの画像ファイルは、小学校5年生「電磁石の性質」で児童が見いだした問題です。学級全員分の記述が表になっています。この画像ファイルを先ほどのChatGPTへ入力すると…

図5:小学校5年「電磁石の性質」問題の見いだし
次のように、上から児童A、児童B、児童C…と同時にフィードバックすることができます。授業では、全員がアンケートフォームなどに記述して、それを集計してChatGPTに流し込みます。返ってきたフィードバックを児童に共有して、自分の記述を修正します。※児童名が入り込まないように、児童Aなど個人情報に気をつけましょう。

図6:ChatGPTによるフィードバック②
5.実際に使った様子③ 〜ノートの写真を撮ってフィードバックを受ける〜
授業中の記述を一人一台端末ではなくノートで行う場合が多いと思います。生成AIの進化で、最近はノートの記述も画像で読み込むことができるようになりました。

この画像は、小学校6年生「電気の利用」で豆電球とLEDの消費電力の違いを追究する場面です。ノート見開き1ページで問題から結論までを書いたものを、画像ファイルのまま生成AIに流し込むと…

このように、問題解決過程ごとにフィードバックを受けることができます。授業中の使い方としては、代表で1〜2名のノートの写真を授業者が撮影して、それを生成AIにフィードバックさせて、そのフィードバックを学級全体で共有し、児童一人ひとりの記述の修正へ反映させるといった使い方が可能です。
6.さいごに
生成AIの進歩はとても速く、数年前は精度が低くて時間もかかっていた画像やファイルからの文字の読み取りも、今では授業で使えるほど便利になってきました。授業中に子どもたちがノートを書き終えた後、その内容を生成AIに入力してフィードバックを受けることで、子どもたちの考えや記述をさらに深めることができるようになっています。
しかし、どんなにAIが進化しても、子どもたち一人ひとりに寄り添った教師の声かけや発問にはかなわない部分があると思います。これからは、教師のサポートと生成AIのフィードバックをうまく組み合わせることで、今までにない新しい授業ができるのではないかと期待しています。この記事を読んでくださった皆さんも、ぜひこのプロンプトを使ってみて、どんな授業ができるか一緒に考えていただけると嬉しいです。
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