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「見る力」を育てる理科の授業 ―カタバミとシロツメクサの比較から―【理科専科.com】

観察の“視点”を育てることの大切さ

小学校3年生の理科では、「身のまわりの生き物の観察」が大切な学習内容のひとつです。ですが、いきなり「観察してみよう」と言っても、子どもたちはどこを見たらいいのか分からず、ただ「見た」で終わってしまうことがよくあります。そんなとき、観察をするときの“視点”を与えることが、子どもたちの「見る力」を育てる上でとても大切です。

「サイエンスビンゴ」で“見る力”の入口をつくる

単元の導入では、「サイエンスビンゴ」と称して、教室にある物の中から、たとえば「赤いもの」「丸いもの」といった色や形などに目を向けさせたものを探しました。その次は、実際に校庭に出て、自然の中から探しに行きました。何となく、生き物を見る視点を与えたとはいえ、植物を観察して際に「形、色、大きさに注目させる」ことの必要性を子どもたちに考えさせたいと思っていました。

「クローバーだ!」から始まる学び

そこで今回の授業では、カタバミの写真を見せるところから始めました。子どもたちの反応は、「クローバーだ!」という声。こうした反応は、子どもたちがこれまでに身のまわりで見たことがあるからこそ出てくるもので、とても良い出発点です。

ただ、私たちが一般に「クローバー」と呼んでいる植物は、実は「シロツメクサ」という名前であること、そしてカタバミとは別の植物であることを伝えました。その上で、シロツメクサの写真も見せ、二つを比べさせました。

カタバミ
シロツメクサ

すると、子どもたちは次のような違いをどんどん発見していきました。

  • 「カタバミの葉はハートの形、シロツメクサは丸い」
  • 「カタバミの葉の色は緑で、シロツメクサは黄緑」
  • 「カタバミの花は黄色、シロツメクサの花は白」
  • 「シロツメクサの葉には白い模様がある」

これらの発言は、子どもたちが自分の目でしっかりと「違い」に気づいた証です。ただ写真を見て「きれいだね」で終わるのではなく、「どこがどう違うのか」「なんで違うのか」という視点で見ることで、観察がぐんと深まっていくのです。

また、学校の庭にはシロツメクサがあることを知っている子も多く、「じゃあ、カタバミとシロツメクサ、学校にあるのはどっち?」と問いかけると、「探してみたい!」という声が自然とあがりました。このように、日常の中にある身近な植物に目を向けさせることで、「自分たちの生活の中にも理科がある」と気づかせることができます。

ここで大切なのは、子どもたちに「植物はそれぞれ、形・色・大きさがちがうんだ」という気づきを与えることです。この“気づき”は、次の単元や次の観察活動への大きな橋渡しになります。

「形・色・大きさ」に注目して観察する

たとえば次の時間では、「いろいろな生き物を見つけて観察しよう」という活動が予定されています。このとき、何の視点もなくただ見るだけでは、「虫がいた」「花がさいていた」で終わってしまうかもしれません。でも、「形、色、大きさに注目してみよう」という言葉かけがあると、子どもたちの見方がぐっと変わります。

たとえば――

  • 「この虫は体が長いけど、こっちは丸い形をしている」
  • 「この花の色は赤だけど、さっき見たのは紫だった」
  • 「葉っぱの大きさが全然ちがう!」

というように、ただ「見る」から、「比べて見る」「気づいて見る」へと、観察が変わっていきます。

観察する力は他教科にもつながる

このように、「ただ見る」のではなく、「比べて見る」「気づいて見る」視点をあらかじめ持たせることで、観察の質が高まり、生き物の多様性に自然と気づいていくのです。そして、この“違いに気づく”という学びは、理科だけでなく、他の教科や日常生活にもつながっていきます。

たとえば――

  • 国語では、登場人物の考え方の違いに気づく力
  • 図工では、形や色に注目して表現する力
  • 生活科では、季節による変化に気づく力

など、観察をもとにした「気づきの力」は、学びの土台になります。

理科が苦手でも大丈夫。問いかけから始めよう

理科が苦手だと感じている先生にとっては、「どこまで教えたらいいのか」「どんな質問をしたらいいのか」不安になることもあると思います。でも、まずは「比べてみよう」「どこがちがうかな?」という問いかけだけでも十分です。子どもたちは、思った以上にいろいろなことに気づき、自分たちで学びを深めていきます。

大事なのは、“完璧に教えること”ではなく、“子どもと一緒に発見していくこと”。教師が「おもしろいね」「ほんとだ、ちがうね」と素直にリアクションするだけでも、子どもたちはうれしそうに学びを進めていきます。

理科の授業は、「知らなかったことに気づける時間」です。その第一歩として、「カタバミとシロツメクサを比べてみる」活動はとても効果的です。身近な植物から始めて、“ちがいに気づく力”を育てることが、これからの理科の学びを豊かにしてくれるのです。

  • コメント ( 1 )

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  1. ぶっち

    「観察の視点を与えることで観察する力を養う」は、まさにそうだなと想いました。その基礎となる見る力を育てるサイエンスビンゴは、形、色、大きさを意識できるので、自分もやりたくなりました。
    そして、観察する力はが、「比べて見る」「気づいて見る」視点をあらかじめ持たせることで、観察の質が高まり、生き物の多様性に自然と気づいていき、そして、この“違いに気づく”という学びは、理科だけでなく、他の教科や日常生活にもつながっていくというのも、なるほどと思いました。1つの教科から学べることを活かす力にも繋がるので、その視点を持って授業を通年でやっていくことで、どんな教材や活動もそこに繋げていける面白さに気づけた記事でした。最後に、「大事なのは、“完璧に教えること”ではなく、“子どもと一緒に発見していくこと”。」我々大人も子どもと同じ学習者であることが、この授業を生み出しているように思えました。ありがとうございました。

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