教材が足りないときは理科室を博物館化しよう!【理科専科.com】

1.教材が足りない=演示実験というマインドを見直す
みなさんは、どんな場面で演示実験を取り入れていますか。児童の発達段階的に操作が難しい場面や児童が扱うには危険が伴う場面、準備があまりにも大変すぎる場面、あるいは自然事象との出会いとしての場面などが挙げられます。一方で、演示実験ではもったいない場面があります。それは、「教材が足りないから演示実験で示す」という場面です。「本当はみんなに体験させたいけれど、班の数分の用意がないから、演示実験でみんなに見せるしかない(あるいは、代表者にやらせよう)」という場面に遭遇したことはあるのではないでしょうか。そんなときは、「博物館化」のチャンスです。理科室を博物館化して、各所にブースを設け、全員が体験できるような企画展を開催してみましょう。

2.博物館化のメリット
(1)「足りない教材」から解放されることで生まれる可能性
今回、私は第6学年「土地のつくりと変化」の単元で、「土と石のふしぎ発見展」という企画展を開催しました。本単元の学習にあたって、準備室に火山噴出物の1つである「軽石」があったのですが、班の数分の用意がない状態でした。最初はみんなの前で電子てんびんを使って軽石とふつうの石の重さの違いを演示実験で示そうと考えたのですが、「持った時の軽さ」や「多孔質である点」を全員が体験・観察できないのはもったいないと考え、博物館化に至りました。そして、せっかくなら単元に関わる教材をブースごとに理科室に配置したら面白いのではないかと考え、次の図のようなエリアを設定しました。このように博物館化のアイデアは、「今までやらせてあげられなかった」という数の制限から解放されることによって「これもできるかも!これもやらせてあげたい!」という前向きで可能性に満ちた授業づくりに繋がっていきました。

(2)企画展を授業参観の日に合わせよう
私は授業参観の日に行うことで、親子で楽しむことのできる企画展にしました。今ではデザイナーでなくともCanvaなどを使えば簡単にチラシを作成できる時代です。企画展の告知用チラシを制作・発信することで、できるだけ多くの保護者に参加してもらえるようにしました。また、当日のブースの中に「私のお気に入りの石」というエリアを設け、お家にあるお気に入りの石を持ってきてもらいました。

(3)各ブースにキャプションを設け、子どもたちに視点を持たせよう
企画展当日は、まるで博物館のように子どもたちが自由に各ブースを周っていきます。そこで重要になってくる点は「視点を持って教材を体験・観察する」ということです。ただ遊んで「楽しかった」ではなく、子どもたちが「なぜだろう?」と問いを持ちながら教材に触れ合えるようなキャプションを用意します。例えば、軽石体験ブースでは「軽石はどうして軽いのか?」、砂鉄体験ブースでは「学校の砂場にどうして鉄があるのか?」などです。スタンプラリーのようなワークシートを用意して、気づきや考えたことをメモしながら全てのブースを周るようにすると、子どもたちの学びはより深まり、本単元に対する興味・関心も高まっていくでしょう。

3.児童が企画・運営する探究的な学びへ
今回は教員自身が理科室を博物館化するアイデアを生み出し、「土と石のふしぎ発見展」を企画・運営する流れで学習を進めていきました。「博物館化」のアイデアは、単元ごとに数が不足している教材を予め計画的に貯めておき、企画展の際に一気に解放するイメージです。したがって、まずは教員が博物館化に適した単元を理解しておくために教員主導で行っていくことが大切です。一方で、慣れてきたら、子どもに企画展の運営を任せても面白いと思います。班ごとに担当するブースを決め、来場者にそのブースの魅力をサイエンスコミュニケーターとして伝えていけたら、博物館化を探究に繋げていくことができます。

素晴らしい実践ですね。
理科室が綺麗すぎて
うらやましいです。