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「個別最適な学習」における子どもの学習状況の見とり方【理科専科.com】

 近年、「個別最適な学習」というキーワードが教育現場でも広く聞かれるようになり、理科の授業でもグループごとに異なる実験方法で実験したり、それぞれの問題を追求したりする授業が増えてきました。しかし、学びが複線的になるほど、子どもの学習状況が見えにくくなるという課題があります。「個別最適な学習」をテーマにした研究授業を見学すると、子どもたちがそれぞれ活動的に動いている様子はわかるものの、「何となくみんなが頑張っている」という漠然とした印象しか持てないことはありませんか?

 私の勤務校でも「学習の個性化」を柱として研究を進めていますが、「授業中に何を見ればよいのかわからない」と悩む先生方が多くいます。そこで今回は、子どもの学習状況をどのように見取るべきか、その具体的な方法について考えてみたいと思います。子どもの学びを見取る方法は、大きく2つに分けられると考えます。

1.共同注視

 共同注視とは、教師が子どもの視点に立ち、子どもがどんな世界を見ているのか、どんなことに心を動かし、どんなことを考えながら何を見ているのかを体験する見とり方です。大人が見とりたいものを見とるのではなく、子どもが見ている世界を一緒に見る。そこに、評価という概念はなく、Aさんの横に立ち、Aさんの学びを一緒に体験していくことを通して、共感しながら見とっていく方法です。大切なことは、Aさんがどのような空間で、どのような人間関係の中で、どのようなプロセスを経て、今、何があって、何を見て、何を触っているのか。何を言葉にしたのかなどの具体的な事物・現象を見とることだと思います。その中で集めた事実から、Aさんの考えを想像していく。学びがひと段落したらAさんに答え合わせしていくのも大切なことだと思います。

2.評価規準との比較

 2つ目が評価規準との比較です。評価規準というとどこか機械的で無機質なもののように感じますが、実際の授業では教師の願いも多く入ってくるものです。児童の実態から目標を考えたり、目指す子どもの姿と実態を照らし合わせながら目標を決めたり、学習指導要領に書かれてあることを意識しながら考えていると思います。理想的なことを言えば、「本学級の児童」なんて子どもはいないので、平均化したたった1つの目標で30人全員をカバーできるはずはありません。

 子どもたちの主体性を大切にする時代、動機も子どもそれぞれです。解決できる問題を見いだしたいと思っている子。解決したいと思う問題にこだわりたい子。日本語として正しい文章で書きたい子。そもそも問題を見いだしたいと思っていない子。それを十把一絡げに1つの目標でまとめてしまう怖さはあります。ただ、教師として子どもの学習状況を見とる力を育てていくためには、1つ目の子どもの情意面に寄り添いながら見とっていく「共同注視」と2つ目の大人の願いのある「評価規準との比較」を往還しながら、どちらも大切にしていく必要があるように思います。この評価規準との比較がなくなり、なんとなくの評価をその場限りで行ってしまえば、下図のように教科の本質からどんどんと遠ざかってしまいます。

 では、実際の授業では「評価規準」をどのように作っていくのかを「電流がつくる磁力」の単元で書いていきたいと思います。まず、知識・技能です。知識・技能では、系統性が大切になってきます。知識・技能の繋がりが見えるように、3つの階層に分けていきます。一番上は大きな単元目標。そしてその下のグレーにしているところが、学習指導要領の内容になります。そして、下に既習事項と素朴概念を書き出していきます。こうすることで、3つの知識を習得していくためには、何を知っておかないといけないのか、どのような素朴概念が関係してくるのかが明確になり、授業中の即時的な評価、つまりアセスメントの質が向上していきます。

 次に、思考・判断・表現ですが、知識・技能と同様に行っていきますが、私の場合は認知的技能として考えていくため、ここに見方・考え方も入ってきます。また、本単元の前の単元で「振り子の運動」を学習していたため、データ処理が大きな割合をとっています。ここは教師の願いや子どもの実態が大きく関わってくると思います。

 作成した評価規準を使いながら、子どもの学びを見とりアセスメントしていくことで、教師の願いと子どもの実態とのズレが見えてくると思います。そこで、どうして教師の想定とは違う方向に進んでしまうのか、思ったよりもできないのかについて、原因を考えながら、想定と違う子どものそばに行って共同注視をおこなっていくのです。このように、共同注視と評価規準との比較を往還しながら、見とっていくことが大切です。

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