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子どもの思いを基に授業デザインするために ~3年「ものと重さ」~【理科専科.com】

 子どもが実験方法を考えると、条件がそろっていないなど予想や仮説を確かめる実験にならないことがあります。では、その時どうするとよいのでしょうか。科学的な正しさを求めるなら、子どもに、その実験方法では確かめられないことを指摘し、実験方法を変えることが考えられると思います。そうすれば、実験結果は予想や仮説を確かめられるものになるでしょう。しかし、本当にそれでよいのでしょうか。子どもの学びは時間がかかるものではないでしょうか。子どもの思いを基に授業デザインするなら、子どもの考えた実験を行い、結果から科学的な正しさについて考えていくことができるのではないか。「ものと重さ」の実践から子どもの思いを基に授業デザインするためにどうしたらよいのかを考えていきます。

1.問題の見いだし

 「ものと重さ」の導入で、「重さ」について子どもに尋ねました。算数の学習で「重さ」を学習している子どもたちは、重さの単位について話をしたり、体重や重いもの、軽いものの話をしたりします。さらに、「重さとは?」と聞くと、重さは重さと答え、重さについてよくわかっていないことに気づいていました。

 そこで、子どもたちに色々な素材でできたものを用意し、重さについて考えられる場を用意しました。色々なものを手に取り、触ってみたり、手の上にのせてみたり、じっと見つめたり、重さを比べてみたりする様子が見られました。そして、体験の後に、「種類で重さが違う?(軽いものと重いもの)」「形を変えたときの重さ」「持つ所で重さ違う?」の3つについて調べていくことになりました。

 ここで大事なことは、子どもが重さについて問いをもつことです。そのために、子どもが重さについてわかっていないことに気づくようにしました。そして、色々な素材でできたものを用意し、子どもが重さについて考える場を設定し、体験活動を行ったのです。

写真 重さについて考える様子

2.子どものやりたい活動

 「問題 種類で重さが変わるのだろうか。」について考える場面で、予想を尋ねると、素材よりもものの名前が多くあげられました。子どもたちの中で、種類とは、素材の種類ではなく、ものの種類という捉えでだったのです。ここでは、素材の重さ比べが学習内容です。しかし、子どもの意識は、素材の重さ比べではなかったのです。

 そこで、子どもから出てきたものを用意し、重さ比べを行うことにしました。子どもたちは、電子てんびんや上皿ばかりを使い色々なものの重さを測って行いました。この活動は、子どもにとってやりたい活動です。色々なものの重さを測ることは、子どもにとって楽しい活動なのです。そのため、どんどん重さを測っていきます。壁に掛けている時計を取って測ったり、机やいすの重さを工夫して測ったりと、子どもの活動は止まらない。このように子どものやりたい活動をすることで、子どもは、どんどんものと関わっていくのです。

写真 重さを測る子どもの様子

3.当たり前をくずす仕掛け

 子どもの調べたことが黒板に数字として書かれ、集まっていく。何も仕掛けをしていなければ、予想通りに重いものと軽いものがあることがわかり、ものによって重さが違うんだな、今日の活動はおもしろかったなと子どもが思うだけの授業となり、素材による重さの違いについて子どもが気づかないままになってしまう。そのため、子どもが素材の重さ比べ、特に大きさをそろえて重さを比べる必要に気づけるように工夫を行なった。それは、ものの大きさをふぞろいにしておいたのである。

写真 重さ比べのために用意したもの

 例えば、綿である。袋に入ったままの綿(500g)を用意していた。これは、鉄のスプーン(16g)よりも重い。子どもたちは、綿は軽い、鉄は重いのは当たり前と思っている。そのため、重さを測る活動の楽しさがなければ、重さを調べ比べようとは思わないだろう。当たり前と思っていることについて考えてみようとは思わないものである。ところが、子どもたちが測った綿の重さと鉄の重さを比べると、綿の方が重いとなるのである。結果を見て、子どもたちは何かがおかしいことに気づいた。そして、自分たちが行なった実験では、ものの種類によって重さが違うことを言えないのではないかということに気づいたのである。そこで、初めて子どもたちは、ものの種類によって重さが違うことを調べるためには、素材について調べ、ものの大きさをそろえる必要があることに気づいたのである。そして、次の時間には、ものの大きさをそろえて重さ比べを行うことになった。

写真 重さを記録し、黒板に貼る様子

写真 軽いものと重いものに並べ直した板書

4.子どもの思いを基に授業デザインするために

 子どもの思いを基に授業デザインする方法について考えた。子どもがやりたい活動を行う中で、子どもの当たり前をくずす仕掛けをすることがポイントとなる。当たり前と思っていたことが当たり前でないことに気づくことで、子どもはそのことについて考え始める。今回は、素材について調べ、大きさをそろえる必要に気づいていなかった子どもたちは、大きさをそろえて素材で比べる必要に気づき、実験を行うことができた。そして、素材が違うと重さが違うことを捉えることができた。

 子どもの学びは必ずしも最短距離を通って進むものではなく、行きつ戻りつしながら進むものである。子どもの思いを基に授業デザインするためには、子どもの学びには時間がかかることを意識しておく必要がある。それとともに、子どもの思いを実現できるように準備をすることである。今回、子どもが考えた素材を同じ大きさで全て用意することが難しかった。そのため、子どもには全てを用意できなかったことについて謝った。最も大事なことは、子どもの思いを指導者の都合だけでなかったことにしないということではないだろうか。指導者が子どもの思いを大切にする姿勢が、子どもの思いを基に授業デザインする土台になるのではないだろうか。

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