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3年生の生物単元を通して「観察する技能」を育てる【理科専科.com】

1.3年生の生物を扱う単元

 3年生では、生物を扱う単元は「春のしぜんにとび出そう」「たねをまこう」「チョウを育てよう」「どれくらい育ったかな」「トンボやバッタを育てよう」「花がさいたよ」「実ができたよ」「こん虫を調べよう」(東京書籍)です。4月から9月下旬にかけて植物と昆虫を同時に飼育栽培していく学習過程です。

【4月】
・春の自然にとび出そう   
・たねをまこう
・チョウを育てよう

【5月】
・チョウを育てよう
・どれくらい育ったかな

【6月】
・トンボやバッタを育てよう 
・風やゴムで動かそう

【7月】
・花がさいたよ
・わたしの研究

【9月】
・実ができたよ 
・こん虫を調べよう

2.観察記録の技能とその工夫

(1) 諸感覚を使う

 観察記録を書くときに使うのは,色・形・大きさ・手ざわり・におい等の諸感覚です。この諸感覚を使って記録するように指導します。

 例えば,ヒマワリの子葉を観察すると「子葉の色は黄緑色で,形は丸くて細長い,大きさは3㎝位、手ざわりはつるつるしていて,においは,キュウリのようなにおい。」と書けるようになります。観察する視点を決めて毎回記録するようにするのです。そして,ノートを回収し具体的に書けているところには赤線を引き返却する。その時に,よく書けている子どもは全体の場で,どこが良かったか付け加えて紹介するようにする。すると,子どもたちは返却された自分のノートとどこが違うのか見つけようとする。書き方のわからない子は,「そう書けばいいのか。」と次はまねをして書くようになります。そのような活動を繰り返すうちに観察記録する技能が高まってきます。

 観察単元の最初でこの指導を徹底しておくと,次からの観察記録を書くときに教師が助言しなくても子どもは諸感覚を使って書くようになります。

(2) 事実と感想は区別する

 子どもに気づいたことを書かせると「ヒマワリの葉が大きくなっていてびっくりした。」などという事実と感想が混ざった文章を書く子がいます。そこで、事実と感想は別々に書くように指導を続けます。すると,「ヒマワリの葉は15㎝でした。私の手のひらくらい大きくなっていたのでびっくりしました。」という文章を書けるようになってきます。まず事実を書く。そして事実に対してどう思ったかを書きます。書き方の方法を知ることによって次はこう書けばいいんだと納得します。

(3) スケッチは、視点を決めて描く

 図画工作科のスケッチと理科のスケッチでは,目的が違います。理科の観察スケッチの目的は,動物や植物をスケッチすることでその形や特徴を記録に残すことです。そこで,スケッチについては次の3つを指導します。

 ほとんどの子どもは,絵を写真のように描けることが上手な絵だと考えています。写真のように描くことではなく,大事な視点(ポイント)が描かれてあるかどうかが重要であることを指導します。例えば,葉に視点を当てて描くのであれば,葉の形(丸っこいとか細長いとかギザギザがあるとか)や模様(葉脈の入り方)等を注意深く描けているかどうかが大切であると指導します。

 具体的な指導方法を例示します。子どもたちがよく知っているヒマワリを例にとって説明します。黒板に教師が描いていくやり方です。まず,大きな丸の花の形から描きます。最初子どもたちは,先生はヒマワリを描いていると思いながら黒板を眺めています。しかし,葉を描くときにわざと細長いつるんとした葉にすると,子どもたちが次々に「違う」「違う」と言い始めます。そこで「どこが違うのですか」と聞くと「葉の形が違う」と言うのです。

 ここでさらに具体的な形を引き出すために数名に前に出て来てもらい,葉の形を黒板に描いてもらいます。このようなやりとりをした後,ヒマワリの葉の写真を見せます。どこが正しくてどこが違うのか,注意深く見て描くとはどういうことかを黒板に教師が絵を描きながら説明を行います。1本の線で葉を描きながら葉の特徴を話し合いながら描いていくのです。すると,形だけでなく葉脈の模様もよく見て描こうという意識付けができます。

 上記の3つの約束を守りポイントをきちんととらえているものが素晴らしいと常々授業で評価することで,絵が苦手な子供も安心して前向きにスケッチに取り組むことができます。

 すると,次の観察記録の時には,「僕は,葉っぱがギザギザしているところに注目して細かく描きました。」と言ってスケッチを持ってきてくれます。もちろん、大いにほめます。

Aさんのスケッチ

4月時点のAさんのスケッチ
7月時点のAさんのスケッチ

 4月の頃のAさんのスケッチは,じっくり見るのではなく,初見と想像で描いた絵であることが分かります。しかし,7月になると観察スケッチを繰り返した経験から,じっくり観察して昆虫を描けるようになってきます。足に付いているとげのようなものまでくわしく描きこまれています。図鑑で調べるとイナゴであることがわかり,大喜びしました。

Bさんのスケッチ


4月時点のBさんのスケッチ
7月時点のBさんのスケッチ

 Bさんの4月の頃は,形と色だけを見て描いていたことが分かります。観察スケッチを繰り返すうちにどこにポイントをおいて描くか決めて描けるようになります。「葉の外側にギザギザがあるところに注目して描きました。」と報告してくれました。

(4)ノートとタブレットのハイブリッド

ノートとタブレットをそれぞれの特性を考えて活用します。

 その場から動かない植物に対して,昆虫は動き回ります。昆虫を捕まえて透明容器に入れてスケッチするが,じっとしてくれない昆虫をスケッチするのは難しいです。そこで,いろいろな角度からタブレットで写真を撮り,スケッチさせます。タブレット写真の良さは,見たいところを拡大することや保存できることです。

 手描きのスケッチの良さは,どこに注目して描いたかが分かることであり,気付きや自分の考えを記録できることです。両方の良さを活かしたハイブリッドな観察記録を続けます。絵が苦手な子どもには,最初はタブレットで撮影した昆虫の写真の輪郭をタッチペンでなぞらせ,色を付けます。それを見ながら外側の輪郭からノートにスケッチさせると抵抗なく描くことができます。

  • コメント ( 2 )

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  1. 内藤美由紀

    子どものスケッチの変容が素晴らしいです。手描きとタブレットとのハイブリッド観察を繰り返すことで、さらに視点がはっきりしていくのかなと思いました。ありがとうございました。

  2. 牧逸馬

    ありがとうございます。
    3年生から手描きのスケッチを大切に指導しています。
    写真だけでは、観察眼がなかなか育たないからです。
    4年間積み上げていくとかなり上達します。

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