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5年「物の溶け方」の学習において、発泡入浴剤を溶かすことの価値【理科専科.com】

 5年「物の溶け方」の学習では、水に溶かす物として何を扱いますか。一般的には「食塩」と「ミョウバン」を扱う先生が多いのではないでしょうか。なぜこの2つの物質を扱うのか。その大きな理由の一つに、溶け方における性質が異なるということが挙げられるでしょう。具体的には一定量の水に溶かすことのできる限度(溶解度)が異なること、また水の温度における溶解度の変化の大きさが異なることの2点から、「食塩」「ミョウバン」が扱われるのです。

 子どもが質的な見方を働かせ、水に溶ける物の性質を追究していく場面においては、このように溶け方の異なる2つの物質を並列的に扱うことはとても重要なことです。一方で、実体的な見方を働かせ、水に溶けて見えなくなった物は、存在しているのかを追究する場面では、上記の2つの物質を扱っても、「溶かす前と溶かした後で、合計の重さは変わらない」という同じ結果が出るだけです。もちろん結果が違っては困るのですが。複数の物質において、質量保存の法則が成立するというのは大きな価値です。けれども、この学習に加えて発泡入浴剤を溶かす学習を発展的に取り入れることで、さらに大きな価値が得られるのでご紹介します。

1.発泡入浴剤の価値

 食塩やミョウバンを水に溶かしても、溶かす前と後で重さの合計は変わりません。では、発泡入浴剤を水に溶かすと重さはどうなるのでしょうか。溶かす前と溶かした後では、写真①と写真②にあるように電子上皿ばかりの示す数値は小さくなります。これは、発泡入浴剤が水に溶けたことで、水中で炭酸水素ナトリウム(重曹)とクエン酸などの酸が反応して二酸化炭素が発生し、これが空気中に出ていくためです。この教材の最大の価値は「より系統的に学習が進められる」ことにあります。つまり、4年「空気と水の性質」と6年「水溶液の性質」と本学習を関連付けながら学習をすることで、物を実体として捉える視点(実体的な見方)がより豊かになるのです。


写真①

写真②

 4年「空気と水の性質」において、空気は目に見えないけれど、確かにそこに存在しているということを、空気を閉じ込めた袋を触って手ごたえを感じることや、水中で泡として視覚的に捉えることを通して学びます。ここでの学びを本学習と関連付けて思考すれば、「空気のように目に見えないものも存在しているのだから、存在している以上重さもあるはずだ。」「発泡入浴剤を水に溶かすと、食塩やミョウバンが溶ける時と違い、泡(気体)が発生するから、その分重さも軽くなるだろう。」といった話し合いが学級内で生まれ、結果として実体的な見方を働かせながら既習事項を基にした根拠のある予想・仮説が発想されることになります。

 6年「水溶液の性質」では、金属を変化させる水溶液について学習します。具体的には塩酸にアルミニウムを溶かし、溶かし終わった後の液体を蒸発させると白色固体が蒸発皿に残ったことから、「白色の固体はアルミニウムなのだろうか。」という問いを見いだし、問題解決を行う展開が挙げられます。この問いについて考えていくときに、発泡入浴剤の学習が既習事項としてあれば、「水に発泡入浴剤を入れたら、二酸化炭素が発生して、溶けた後の重さが軽くなっていた。」「今回も何かの気体が発生して空気中に出ていったから、アルミニウムのまま液中に残っているとは考えづらい。」といった話し合い学級内で生まれ、これもまた実体的な見方を働かせながら既習事項を基にした根拠のある予想・仮説の発想につながることでしょう。

 上記の2つの場面において、目に見えないものを実体として捉え、論理的に思考する学習が4〜6年を通じて積み上げられているのがお分かりいただけたでしょうか。以上が発泡入浴剤を教材として取り扱う最大の価値になります。

2.学習の展開

 学習の展開の仕方としては、「食塩」と「ミョウバン」について、両者を水に溶かしても重さが保存されるというきまりを問題解決を通して獲得します。その後、児童の方から「他の物を溶かしても重さは変わらないのかな。」という新たな疑問が見いだされるのが理想ですが、児童から出なそうであれば、こちらから発泡入浴剤を提示して、溶かす前と後とで重さがどうなるのか調べることを、課題として設定してもよいでしょう。余談になりますが、粒子を柱とする領域の学習では、物の性質を明らかにしていくために問題解決が展開されるという形が主になるので、一つの物の性質が分かったら、自然発生的に「他の物でも同じことが言えるだろうか?」とつぶやける児童、つまりきまりの適用範囲を拡張できるかどうかという視点をもって追究していく児童を育てることが大切です。

 問題(課題)が設定されたら、先述の通り、根拠のある予想・仮説を発想することが大切です。食塩やミョウバンの溶解と異なり、泡が発生していることに着目し、4年「空気と水の性質」の学習と関係づけて考えていけるよう支援していきましょう。実験計画の立案は、食塩やミョウバンの溶解前後の重さを調べたときの計画を想起できるよう促してください。既習事項を生かして考えれば、発泡入浴剤を溶かす前と後の合計の重さを量って比較すればよいのですが、動画①にあるような実験も演示として行うことで、泡(気体)が空気中に出ていき、それに伴い重さが減っていく様子がより実感できると思います。予想・仮説の段階で、重さが減ると考えていた児童も、自分が想像していたよりもずっと軽くなるという結果に大きな驚きを見せることでしょう。このようにして、児童の実体的な見方は豊かにしていくことができるのです。ぜひ実践されてみてはいかがでしょうか。

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