
「法」を味方に
自分が教員だった頃を思い出すと、教科書の「朱書き」、指導書(研究編)、学習指導要領解説を読み、授業について考える程度が「研究」でした。しかし、これでは視野が狭く、流行や最新のキーワードに「踊らされ」、真に子どものためになる授業ができていなかったと考えるようになりました。「踊らされず」に授業を行うにはどうすればよいでしょうか。1つの解が、法律から考えることだと思います。法律というと教育となじまないように思われるかもしれませんが、民主主義を憲法で規定している日本では、法律は国民との約束と考えるべきでしょう。法律は、一般に、慎重によく考えて作られ、頻繁に変わることは少ないので、これを基にするのが適当と考えます。学校教育は私立学校といえども法令に規定されていますから、これから離れて、教育を行うことはできないのです。法律を「敵として使われる」のではなく「味方にして使う」ようになるとよいと思います。そこで、「研修」に関して、特に注意を払うべき法律を紹介します。
「研修」に関する法律
教育基本法
第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
次に、研修に関する条文がある、教育公務員特例法、地方公務員法の該当部分を抜粋します。
教育公務員特例法(条文内の( )部分を省略しています)
第二十一条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
2 教育公務員の研修実施者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
第二十二条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3 教育公務員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。
地方公務員法
第三十九条 職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 前項の研修は、任命権者が行うものとする。
研修の目的は、教育公務員特例法が「職責を遂行するため」、地方公務員法が「勤務能率の発揮及び増進」となっていると解釈できます。教職にとって研修がより本質的で重要ということではないでしょうか。また、教育公務員特例法では、「勤務場所を離れて研修を行うことができる(いわゆる「承認研修」等)」が規定されていることが重要だと思います。最近ではあまり聞かれなくなりましたが、「承認研修」はどの程度実施されているでしょうか。昭和24年に法律を制定した人たちの思いに応えられているでしょうか。さらに、「現職のままで、長期にわたる研修(大学院派遣等)」という手段もあり、手厚いのがわかると思います。私もこの条文のおかげで大学院修学のため休業することができました(残念ながら無給でしたが…)。
「自主的な研修」を応援
このサイト(理科専科.com)を閲覧することをはじめとして、小学校理科の実践研究に自主的に励む先生は、教育公務員特例法を遵守していることになるでしょう。自主的な研修(研究会への参加やそれに関わる活動等)は、育成を目指す学習者像にふさわしいものであり、いわゆる「公的研修」とは違うものとして、大いに尊重されるべきです。ただ、自主的な研修が、関係者の多大な努力にもかかわらず、必ずしもうまくいっていないのではないかと思うようになりました。みなさんにも、心当たりはないでしょうか。今後、自主的な研修がさらに活発になってほしいし、私も積極的に協力したいので、理科専科.comで研修について書いていければと考えています。